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7月29日(水)  リスボン

 リスボン最後の日。朝、ホテルの前の、エドゥアルド7世公園を散歩する。リスボンの空気は、今日も気持ちいい。こんなに肌に気持ちいい風を、いままで感じたことがあったろうか。日本に一番もって帰りたい土産は、このリスボンの空気かもしれない。大西洋の風が、テージョ川を通って街中を吹き抜けているようだ。
 街の中心にあるエドゥアルド7世公園からは、ポンバル(18世紀の名宰相と言われた人)広場のポンバル像の向こうに、真っ直ぐ青いテージョ川まで遮る物なく見渡すことが出来る。公園からテージョ川まで、邪魔な建物は作らず、とても気持ちのいい眺めになるように街が設計されている。
 公園には、大きな夾竹桃の木があちこちに茂り、セトゥーバルやベレンで見たように、どれも鮮やかで息を呑むほど美しい花をつけている。
 「庭に夾竹桃は植えないでほしい」と普段は夾竹桃に冷たい妻も、ポルトガルの夾竹桃はきれいだ、と認めている。

 地下鉄に乗ってグルベンキアン美術館を見に行く。カルースト・グルベンキアンはアルメニア人の石油王で、晩年をリスボンで暮らし、莫大な遺産と美術品コレクションをポルトガルに寄贈した人だということだ。どれだけの遺産だったのか、グルベンキアン財団のオーケストラや合唱団、バレエ団まである。美術館は、木々の茂るグルベンキアン財団の広い敷地の一角にある。この美術館には珍しくクロークがあり、係りの女性が編み物をしていたが、ここに荷物を預けてから観る。
 エジプト、ギリシャ、ローマ、中近東、中国、日本、西洋の中世から近代まで、ここにはあらゆる美術作品がある。エジプト美術も素晴らしかったが、グルベンキアンがイスタンブール生まれだったからか、ペルシャ、トルコの絨緞と焼き物のコレクションが圧巻だった。特に絨緞の美しさは格別で、幾部屋にもわたり、様々な色合いや柄の鮮やかな絨緞が壁や床に広げられていた。中でも、肉食獣が獲物に噛み付いている柄が全面に施されている赤い絨緞が、最も美しかった。臙脂の赤が、窓から射し込む光の加減で明滅するかのように魅惑的に変化する。展示室は、黒い紗の下がった大きな窓から緑豊かな庭園が透けて見え、静かでゆったりと落ち着いた空間。
 中国の焼き物は、ほとんど清朝の大型のものであまり興味を持てなかったが、その横に並んでいた日本の漆器の繊細、緻密な美しさに驚かされた。小さな三段の引き出しがあり、本当に小さな面の全てに野の草が金で施され、地の黒い漆の色から浮き上がり、信じられないほど精巧な仕上がりだった。日本でも、ここまで小さく精巧な漆器は、滅多に見かけないように思う。根付もたくさんあり、漆の硯箱もあり、日本からはるかに遠いポルトガルの美術館で、江戸時代の職人の腕とセンスが光っていた。
 西洋美術は、中世の細密画から、レンブラント、ベラスケス、コロー、印象派の画家までのあらゆる絵画、そしてフランス18~19世紀の工芸、ロダンの彫刻、グルベンキアンと個人的に親交のあったというルネ・ラリックのコレクションまであったが、なぜか今ひとつ心に残らなかった。細密画も、ペルシャの展示室にあったものの方が、はるかに美しく思えた。 

  ポルトガル7.29リスボンの食堂 食堂 ポルトガル7.29リスボンの女の子 リスボンの女の子

 美術館を出て、近くのショッピングセンターで少し買い物をした後、繁華街バイシャの美味しかった食堂で昼食。喉に気持ちいいヴィーニョ・ヴェルデと、妻が食べたがっていたメロンに生ハム、バカリャウ(干したタラ)の蒸したもの。バカリャウは部分的にしょっぱかったが、付け合せの菜の花(!)やジャガイモと一緒に食べると美味しい。デザートに焼きりんごとプリン。これもさっぱりして良い。コーヒーを飲んで出る。
  ポルトガル7.29リスボン食堂のおじさん 給仕のおじさん ポルトガル7.29リスボン食堂のおじさん2 調理のおじさん


 バイシャを通って、サン・ジュスタという名前のエレベーターに乗る。これは、坂の街リスボンで、坂を上らなくても済むように街なかに作られたエレベーターで、エッフェルの弟子が設計したという古めかしいもの。内部は木造で広く、なんとゴシック調に装飾されたエレベーターだ。上に出ると見晴らしがよく、気持ちがいい。
 エレベーターを上がった横には、カルモ教会の廃墟がある。この廃墟は、リスボンの大地震で崩れた教会をそのままの状態で残していて、一部が博物館になっている。青空を背景に古い柱が立ち並んでいて、彫刻の感じなど、とても良い。
 博物館の内部は、この教会の石造りの立派な壁や柱のアーチが生かされていて、出土品や考古遺物などが展示されていた。教会の前には、気持ちのいい街路樹の茂る小さな広場がある。
 シアードにある大きい本屋をのんびり見た後、アズレージョの店、サンタナを覗いてみる。アズレージョの土産物をたくさん並べて売っている。ベレンにあるこの店の工房も、八月いっぱいは夏休みだと言っていた。妻が小さな土産物屋で刺繍の入ったエプロンを買い、ホテルへ戻る。
  
 夕方、ホテルの前のエドゥアルド7世公園の夾竹桃を一人でスケッチしに行く。たくさんある夾竹桃を一本づつ見て歩いていると、花の色も枝ぶりも、それぞれに違い、それぞれに魅力的だったが、濃いピンクの花の咲く、大きく枝の広がった一本を選んで描くことにした。いい紙を広げ、日暮れまでかかって描いたわりに、なかなか思ったようには描けなかった。この夾竹桃を描きに、いつか夏にまたこの公園に来たい、と思った。ホテルに戻るのが遅くなった。
 
 遅い夕食に出るが、ほとんどの店が閉まっていて、あまり美味しい夕食にはありつけなかった。深夜まで荷造り。寝る時間がほとんどない。明日は起きられるのだろうか?ホテルのフロントにモーニングコールを頼む。 
 
 ポルトガル7.29夾竹桃 エドァルド7世公園の夾竹桃

 グルベンキアン美術館のウェブサイト

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