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鳥獣戯画の模写を終えて 2007
 
 2007年の鳥獣戯画の模写を通して、自分なりに考えたこと、発見したことをまとめてみます。
模写を始めた動機は、
「模写を始めるにあたって」をご覧ください。

Ⅰ模写の方法 ―「上げ写し」と「臨写(臨模)」、「現状模写」と「復元模写」―

 模写を始めるにあたって、まず、どのような方法で模写をするのか、ということを考えました。

 日本画の模写には、大きく分けて「上げ写し」と「臨写」(臨模)という二通りの方法があります。
 「上げ写し」というのは、原画(あるいは原画の印刷物などの手本)の上に、にじみ止めした薄い和紙を重ね、その紙を巻き上げ、巻き下ろしを繰り返しながら、目に映る残像を利用しつつ、上に重ねた薄い和紙に原画を正確に描き写してゆく方法です。
 「臨写」というのは、横に置いた手本を見ながら写してゆく方法です。
 また、絵の具の剥落や紙の破損などを含め、絵の現状を正確に写してゆく「現状模写」と、描かれた当時の状態を想定して写してゆく「復元模写」、という方法があります。
 
 現在美術大学の日本画教育の中で教えられている模写の方法は、「上げ写し」で「現状模写」をするという方法が主流のようです。私が学生時代に習った模写も「上げ写し」で「現状模写」だったのですが、この方法には大きな疑問を持っていました。それというのも、作業自体が極度に近視眼的にならざるを得ない上げ写しでは、どうしてもただなぞるように写す、という意識が強くなってしまい、対象となる絵を自分の中でしっかりと捉え、解釈しながら写す、という意識にはなりにくいのです。
 さらに、一本の長い線も場合によっては数ミリずつという単位で写し取っていくため、よほど筆に精通した人でなければ、線自体の持つ力や勢い、表情を失わずに写し取ることは難しく、筆の扱いを学び始めたばかりの学生が取り組むのに適当とは思えません。
 また、紙の破損で途切れた線や、絵の具の剥落までも正確に写し取っていく、という現状模写も、絵の学習の一環としての模写には不必要なことなのではないか、と思えるのです。たとえば、一続きの線で描かれた枝を模写するのに、そこに虫食いがあって線が途中で途切れているからと言って、わざわざ筆を虫食いのところで止め、途切れた二本の線として写し、虫食いまで再現する必要がどこにあるのでしょうか?学術的な資料として現状を正確に写しておく、という目的の模写であれば、上げ写しによって虫食いまで再現する必然性もあるでしょう。しかし、絵の学習の一環として、原画を描いた画家の意図や技法を学ぶのであれば、一続きの線として描かれた枝は、一続きで描き写さなければ意味をなしません。

 つまり、模写を始めるにあたっては、まず模写の目的を定め、目的に合った模写の方法を選ぶ必要があるはずです。 私の今回の鳥獣戯画模写は、この絵を描いた画家がどのような筆の技術を用い、どのような意識で絵に向かっていたのか、という点を学ぶことが目的であったため、臨写による復元模写が適当であると考えました。 美術大学での模写も、画家を目指す学生が絵の学習として取り組む以上、やはり臨写で復元模写をする方が理にかなっていると今回の模写を通して感じました。
 日本画の模写というと上げ写しばかりが広く一般的に行われていて、大学などでも臨写をしっかりと教えているところがほとんどないのは何故なのか、大きな疑問です。

 
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