トップ◆ポルトガル紀行 7月25日
7月25日(土)  リスボン

 リスボンのバスをはじめて利用し、国立アズレージョ美術館へ行く。慣れないバスに妻と言い合いを繰り返しながら、何度も乗り間違えて同じところを行き来し、かなり手こずる。美術館の入り口では、結婚式の黄色い風船をつけた車を何台か見る。
 
 国立アズレージョ美術館は、16世紀からの歴史のある立派なマドレ・デウシュ修道院の中に作られている。古い修道院と近代的な明るい展示室が合体していて、木の茂る庭とカフェもあり、素晴らしい環境の美術館だ。こんなに立派な国立のアズレージョ美術館がある、ということ自体、アズレージョがポルトガル文化の重要な一部であるということを示しているように思える。一度見てみる価値のある美術館だと思う。
 美術館自体が修道院の中にあるため、17世紀のアズレージョで飾られた美しい回廊や階段、18世紀バロックの豪華な内装の教会や礼拝堂、参事会室なども見学できる。中庭を囲む回廊に沿って展示室があり、16世紀から現代のものまで、各時代のアズレージョが展示されている。
 アズレージョは、コインブラの旧カテドラルにもあったような、16世紀初期の幾何学的な模様のものが美しい。唐草模様のような凹凸の模様を付けた上に何色かの釉薬が掛かっているが、エメラルドグリーンやオリーブグリーンなど、緑が美しかった。イスラムからスペインを経由してポルトガルに入ってきた初期のものだ。17-18世紀の、しっかり上手な歴史画や宗教画のものは、絵柄としてはあまり好きになれないものも多い。ただ、遠目には青と白が映えて美しい。植物や動物、鳥の柄はのびのびとして楽しいものがある。
 「リスボンの大パノラマ」という、1700年のリスボン全景を描いた横幅20メートル以上もあるアズレージョの絵があった。この絵はコバルトの青で、立ち並ぶ建物や通りを行きかう人たちからテージョ川に浮かぶ帆船まで、街の細部まで描かれていて面白かった。

 修道院の教会では、さっきの人たちが結婚式の最中。教会の前の人だかりに混じって見ていると、人々に見守られて新郎新婦が出てくる。教会の入り口の暗闇から新婦の白いベールが見え、クラッカーの色とりどりの紙ふぶきが散る瞬間は、とても印象的だった。
ポルトガル7.25結婚式 マドレ・デウシュ教会の結婚式


 バスに乗って、カモンイス広場まで出て昼食。日中はとても日差しが強く、気温も高いが、日本の夏と違って汗はかかない。ビールを飲む。
 妻に付き合ってもらって、ガタガタ走る市電に乗り、現代作家のアズレージョ作品を扱っているギャラリーRATTONへ。途中、国会議事堂の前を通る。国会議事堂は神殿のように大きな白亜の建物だった。ローマの最高裁判所が、やはり神殿のように立派な建物だったことを思い出した。
 ギャラリーRATTONは、かなり探して見つけたものの閉まっていたので、タクシーで引き返し、一気に丘を上ってサン・ジョルジェ城へ向かった。

 サン・ジョルジェ城は、リスボンの街を見下ろす高台にあり、5世紀からの歴史ある城跡で、真っ青なテージョ川と赤がわらの屋根の街並みを遠くまで眺め渡すことができて、とても気持ちよい場所だ。日本ではありえないような、刈り込まれずにのびのびと枝を伸ばした松、そして銀色に輝くオリーブが印象的だった。

 城壁を歩いたあと城を出て、城の外に広がるアルファマへ。アルファマは、1755年にリスボンを壊滅させた大地震でも被害が少なく、古い街並みが残るという地域で、司馬遼太郎も絶賛していたが、彼が歩いた頃とは変わってしまったのだろうか。あまり味のある街並みとも思えず、少し失望。
 階段の続く路地の踊り場のような小さい広場の角に、昔ながらの生活を思わせる白壁の共同洗濯場があったのが印象に残っている。

 少し歩いて、カテドラルに入る。ポルト、コインブラに引き続き、このリスボンのカテドラルも素晴らしかった。中世の建築は、あまりうるさく飾らずとも、なぜか力強い存在感がある。
 傾いた日差しがバラ窓のステンドグラスから差し込み、薄暗く、色彩に乏しい聖堂内を、虹色のまだら模様に染めていく。ピンクやオレンジ、青や黄、柔らかい光の円が石の柱や木のベンチの上をゆっくりと動いてゆき、幻想的な美しい時間だ。中世の人たちは、どんな思いでこれを見たのだろう。この美しさに、神の偉大さを感じたのだろうか。
 裏の回廊部分では、古代ローマ時代の遺跡の発掘中で、立派な石組みが見える。
 聖堂内に戻り、ここのパイプオルガンの演奏が聴けるか尋ねてみると、明日日曜のミサで演奏されるということが分かる。どこの大聖堂にも備え付けられている立派なパイプオルガンを、ポルトガル滞在中にぜひともどこかで一度聴きたいと思っていたのだ。オーケストラやオペラの公演はヨーロッパ各国から日本へやってくるが、大聖堂のオルガンばかりは日本へ持ってくることが出来ない。
 ちなみに、オルガンもポルトガルから日本に入ってきた言葉らしい。「オ」にアクセントをつけて「オールガン」と言うと、ちゃんと通じる。

 カテドラルを出てしばらく周りを歩いてみる。どこから見ても本当に立派な建築物だ。窓のくぼみ一つとっても、巨大な深みを感じさせる。カテドラル脇の街路樹をスケッチする。
ポルトガル7.25リスボンカテドラル リスボン 街路樹とカテドラル


 宿に戻った後、街の食堂で夕食。ここの食堂は味がよく、値段も比較的安く、ようやくいい店を見つけたと思った。ヴィーニョ・ヴェルデ、そしてメロンと生ハムが美味しかった。イワシの塩焼きが、一人前五匹出てきたのは驚いたが、塩加減が良く、美味しく食べきる。やはり胃もこちらの分量に慣れてきたのだろう。デザートのケーキも、さっぱりして良かった。満足。

 国立アズレージョ美術館 ウェブサイト

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